ドバイで法人を設立するとき、多くの方が最初に迷うのが「フリーゾーンとメインランドのどちらを選ぶか」です。
結論からいうと、どちらが常に優れているという答えはありません。主な顧客がどこにいるか、ドバイ市内でどのように営業するか、必要な許認可、事務所と人員、法人税の条件、年間維持費まで含めて選ぶ必要があります。
本記事では、2026年8月13日時点で確認できるUAE・ドバイ政府およびUAE連邦税務当局(FTA)の公式情報を基に、両者の違いを分かりやすく整理します。
結論:顧客と実際の事業活動から選ぶ
海外顧客との取引や国際的な事業を中心に、小規模な拠点から始める場合は、フリーゾーンが候補になりやすいでしょう。一方、ドバイ市内の企業や消費者へ直接サービスを提供し、店舗・事務所・現場で継続的に活動する場合は、メインランドが適する可能性があります。
ただし、会社名や税率だけで決めるのは危険です。最初に「誰に、どこで、何を提供する会社か」を明確にし、その活動に必要なライセンスと外部承認を確認することが重要です。
フリーゾーンとメインランドの基本
メインランド法人とは
メインランド法人は、ドバイ経済観光局(DET)などの管轄で設立する会社です。認可された事業活動の範囲でドバイ市内の顧客と取引しやすく、店舗、オフィス、飲食、建設、専門サービスなど、現地で直接事業を行うモデルで検討されます。
UAE政府によると、多くの事業活動では外国人による100%所有が可能です。ただし、戦略的影響を持つ一部の事業活動や、業種ごとの許認可には別の条件が設けられる場合があります。
フリーゾーン法人とは
フリーゾーン法人は、各フリーゾーン当局の管轄で設立する会社です。フリーゾーンごとに対象となる事業活動、施設、設立パッケージ、ビザ枠、更新条件が異なります。国際取引、輸出入・再輸出、コンサルティング、IT、メディア、持株会社などの事業で候補になります。
フリーゾーン法人がフリーゾーン外のドバイ市内で活動する場合は、内容に応じてDETのライセンスや許可、関係当局の承認が必要です。2025年のドバイ執行評議会決議第11号により、所定のライセンスや一時許可を取得してフリーゾーン外で活動する制度が定められましたが、すべての活動が自動的に認められるわけではありません。
フリーゾーンとメインランドの比較表
| 比較項目 | フリーゾーン | メインランド |
|---|---|---|
| 主な管轄 | 各フリーゾーン当局 | ドバイ経済観光局(DET)など |
| 主な顧客・市場 | 海外顧客、国際取引、ゾーン内の事業が中心になりやすい | ドバイ市内の企業・消費者との直接取引に対応しやすい |
| フリーゾーン外での活動 | 活動内容に応じてDETのライセンス・許可や関係当局の承認が必要 | 認可された事業活動の範囲で実施。規制業種は外部承認が必要 |
| 外国人所有 | 原則として100%所有が可能 | 多くの事業活動で100%所有が可能。戦略的影響を持つ活動などは別条件 |
| 事務所 | フレキシデスクから専用事務所まで、当局とプランにより異なる | 事業活動とビザ計画に合う物件・賃貸契約が必要になる場合が多い |
| ビザ | 施設やパッケージにより申請可能数が異なる | 事務所、事業規模、当局の審査などにより異なる |
| 法人税 | 設立場所だけで0%にはならない。QFZPの条件と所得区分を確認 | 原則としてUAE法人税の通常ルールを確認 |
| 費用 | ライセンス、施設、ビザ数、追加承認により異なる | ライセンス、事務所賃料、ビザ、外部承認などにより異なる |
| 更新・運営 | 当局ごとの更新、施設、会計、税務、ビザ管理が必要 | ライセンス・賃貸契約・会計・税務・ビザなどの更新管理が必要 |
フリーゾーンが向いている可能性がある事業
- 主な顧客がUAE国外にいる
- オンラインで完結するコンサルティング、IT、マーケティングなどを行う
- 輸出入や再輸出を行い、特定フリーゾーンの物流設備を利用する
- 特定産業のフリーゾーンが提供する施設やネットワークを活用したい
- 必要なビザ数と事務所規模を抑えて事業を始めたい
ただし、UAE国内の顧客から売上を得る場合、その収入がQFZPの「適格所得」に当たるとは限りません。また、商品をフリーゾーンからメインランドへ搬入する場合は、通関や輸入者の体制も確認する必要があります。
メインランドが向いている可能性がある事業
- ドバイ市内の企業や個人へ継続的に直接営業する
- 店舗、飲食店、クリニック、建設現場など、フリーゾーン外の拠点で活動する
- 現地で複数の営業拠点や幅広い人員体制を整えたい
- 顧客や取引先からメインランドのライセンスを求められる
- 将来の事業拡大を前提に、現地市場を中心とした運営を考えている
メインランド法人でも、ライセンスに記載されていない事業を自由に行えるわけではありません。医療、教育、金融、飲食、建設などは、管轄当局の承認や追加条件が必要になる場合があります。
設立費用は「ライセンス代」だけで比較しない
フリーゾーンとメインランドの費用は、事業活動、株主数、ビザ数、事務所、外部承認、設立時期によって変わります。そのため、広告に表示された最安プランだけで判断せず、初年度と2年目以降を分けて見積もることが大切です。
初年度に確認したい主な費用
- 商号予約、初期承認、法人登記、ライセンス発行
- 定款などの作成・認証
- フレキシデスクまたは事務所の利用料・賃料
- Establishment Cardなどの移民関連手続き
- 投資家・従業員・家族のビザ、健康診断、Emirates ID、保険
- 業種ごとの外部承認
- 銀行口座開設準備、会計・税務体制の整備
毎年発生し得る主な費用
- ライセンスと施設・賃貸契約の更新
- ビザ、Emirates ID、保険の更新
- 記帳、財務諸表、監査、法人税・VAT申告
- 銀行のKYC更新に必要な書類整備
- 法人秘書、実質的支配者情報などの管理
同じ名称のライセンスでも、含まれるビザ数、施設、追加活動、更新費用が異なります。比較するときは、少なくとも3年間の総費用で確認すると判断しやすくなります。
法人税:フリーゾーンなら自動的に0%ではない
UAEの通常の法人税率は、課税所得375,000AED以下が0%、375,000AEDを超える部分が9%です。
フリーゾーン法人が適格フリーゾーン法人(QFZP)として0%税率を利用できるのは、適格所得に限られます。十分な事業実態、独立企業原則・移転価格文書、デミニミス基準、監査済み財務諸表などの条件を満たす必要があり、適格所得ではない課税所得には9%が適用されます。
また、フリーゾーン法人を含む課税対象者には、原則として法人税登録と申告が必要です。「税率が0%になる可能性」と「登録・会計・申告が不要であること」は同じではありません。
詳しくは、JCMEの「ドバイでUAE法人を作るだけで節税になる?よくある5つの誤解を解説」もご参照ください。
ビザと銀行口座は法人設立とは別に審査される
会社を設立すれば、希望する人数分のビザや銀行口座が必ず取得できるわけではありません。
ビザの申請可能数は、ライセンス、施設、雇用計画、当局の基準などに左右されます。銀行は、株主と責任者の経歴、事業内容、顧客、資金源、取引予定、UAEでの実態などを個別に確認します。
銀行口座を重視する場合は、設立前に次の資料を準備しておくとよいでしょう。
- 事業計画と具体的な取引フロー
- 既存事業の実績、契約書、請求書
- 株主・責任者の経歴
- 資金源を説明する資料
- 予定する顧客、取引国、通貨、月間取引額
- UAEでの事務所、人員、営業活動の計画
日本側の税務も同時に確認する
UAE法人の形態を選ぶだけで、日本側の税務関係が自動的に決まるわけではありません。経営者個人の居住地、重要な経営判断を行う場所、日本法人との関連者間取引、日本国内で行う業務などを確認する必要があります。
日本法人とUAE法人の間で業務委託料、ライセンス料、商品代金などを支払う場合は、契約内容と実際の業務を一致させ、独立企業間価格を意識した記録を残すことが重要です。日本の税務は日本の税理士、UAEの法人税・VATはUAEの税務専門家へ確認しましょう。
設立前に答えたい7つの質問
- 主な顧客はUAE国外、フリーゾーン内、メインランドのどこにいるか
- 契約、サービス提供、商品の受け渡しをどこで行うか
- 必要な事業活動と外部承認は何か
- 投資家・従業員・家族のビザは何人分必要か
- フレキシデスクで足りるか、専用事務所・店舗が必要か
- 初年度と更新後の費用はいくらか
- 法人税、VAT、会計、監査、銀行対応を誰が担当するか
この7項目が整理できると、フリーゾーン名や設立パッケージを比較しやすくなります。
よくある質問
Q. 日本人はメインランド法人を100%所有できますか?
多くの事業活動では外国人による100%所有が可能です。ただし、戦略的影響を持つ一部の活動や規制業種では、個別の条件・承認を確認する必要があります。
Q. フリーゾーン法人はドバイ市内の顧客と取引できませんか?
一律に取引できないわけではありません。事業活動の内容に応じて、DETのライセンス・許可、関係当局の承認、販売代理店や通関の体制などが必要です。契約前に具体的な取引方法を確認してください。
Q. どちらの設立費用が安いですか?
最安プランだけでは比較できません。ライセンス、事務所、ビザ、外部承認、会計・税務、毎年の更新まで含めた総費用を同じ条件で比べる必要があります。
まとめ:法人形態より先に事業モデルを決める
フリーゾーンは国際取引や小規模な拠点づくりと相性がよい場合があり、メインランドはドバイ市内での直接的な事業活動に適する場合があります。しかし、最適な選択は、顧客、活動場所、許認可、人員、事務所、税務、将来計画によって変わります。
JCMEでは、事業内容と取引の流れを確認し、フリーゾーンとメインランドの候補、ライセンス、ビザ、事務所、銀行口座開設の準備項目を比較します。
公式情報
- UAE Government:Full foreign ownership of commercial companies
- UAE Government:Running a business on the mainland
- UAE Government:Running a business in a free zone
- Government of Dubai:Executive Council Resolution No. 11 of 2025
- UAE Federal Tax Authority:Corporate Tax Guide on Free Zone Persons
- UAE Federal Tax Authority:Corporate Tax Registration
※本記事は2026年8月13日時点の公式情報を基にした一般的な情報提供です。個別の税務・法務・投資助言ではありません。制度、許認可、料金、審査基準は変更される可能性があります。実行前に関係当局および日本・UAEの税理士、会計士、弁護士などの専門家へご確認ください。

