UAE財務省は、2026年7月29日付のMinisterial Decision No. 131 of 2026により、法人税の「Small Business Relief」の適用期間を延長しました。
従来は、2026年12月31日以前に終了する税務期間までが対象でしたが、今回の改正により、2029年12月31日以前に終了する税務期間まで利用できることになりました。
ただし、売上高の基準が引き上げられたわけではありません。また、自動的に法人税が免除される制度でもありません。
UAEで法人を経営している日本人が確認すべきポイントを、制度の基本から申告手続きまで解説します。
今回変更されたのは適用期限
Ministerial Decision No. 131 of 2026は、2023年のMinisterial Decision No. 73にある適用期限の規定を変更するものです。
| 項目 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 適用対象となる税務期間 | 2026年12月31日以前に終了 | 2029年12月31日以前に終了 |
| 売上高基準 | 300万AED以下 | 変更なし |
| 法人税登録 | 必要 | 変更なし |
| 税務申告 | 必要 | 変更なし |
| 利用方法 | 税務申告で選択 | 変更なし |
つまり、今回の改正はSmall Business Reliefの制度全体を変更したものではなく、適用できる期間を3年間延長したものと理解するのが正確です。
なお、決定原文では「公表日の翌日から施行する」とされています。
Small Business Reliefとは
Small Business Reliefは、一定の条件を満たすUAEの居住者である課税対象者が、税務申告において利用を選択できる制度です。
適用した税務期間については、課税所得がなかったものとして扱われるため、原則としてその期間の法人税は発生しません。
また、通常の法人税申告よりも簡易な申告を利用できるため、税額だけでなく、税務コンプライアンスの負担を軽減できる点も特徴です。
ただし、これは法人税の登録義務や申告義務そのものをなくす制度ではありません。FTAの公式ガイドでも、法人税登録と税務申告が必要であることが明記されています。
適用を検討できる主な条件
1.UAEのResident Personであること
対象になるのは、UAE法人税上のResident Personです。
UAEで設立された法人のほか、一定の条件を満たす自然人も対象になり得ます。一方、Non-Resident Personは、売上高が300万AED以下であっても原則として対象になりません。
2.売上高が300万AED以下であること
対象となる税務期間だけでなく、法人税制度開始後の過去の関連する税務期間についても、売上高がそれぞれ300万AED以下である必要があります。
ここで基準になるのは、利益ではなくRevenue、つまり売上高・総収入です。
例えば、売上高が320万AED、経費を差し引いた利益が20万AEDだったとしても、売上高基準を超えているためSmall Business Reliefを利用できません。
3.過去に300万AEDを超えていないこと
いずれかの税務期間で売上高が300万AEDを超えた場合、その後に売上高が300万AED以下へ戻っても、原則としてSmall Business Reliefを再び選択することはできません。
事業拡大や大型案件の受注を予定している法人は、売上計上のタイミングを含め、中長期の税務計画を確認する必要があります。
4.対象期間が2029年12月31日までに終了すること
重要なのは、2029年中に開始する税務期間ではなく、2029年12月31日以前に終了する税務期間が対象である点です。
例えば、税務期間が2029年4月1日から2030年3月31日までの場合、終了日が2029年12月31日を過ぎるため、この延長措置の対象外となる可能性があります。
フリーゾーン法人は対象になるのか
「フリーゾーン法人はSmall Business Reliefを利用できない」と一括りにするのは正確ではありません。
制度上、対象外とされているのは、一定の条件を満たして適格所得に0%税率を適用するQualifying Free Zone Person(QFZP)です。
一方、QFZPではないフリーゾーン法人や、通常の法人税制度を選択しているフリーゾーン法人については、Resident Personなどの条件を満たせばSmall Business Reliefを利用できる可能性があります。
フリーゾーン法人の場合は、次のどちらを適用しているかを最初に確認しましょう。
- QFZPとして適格所得に0%税率を適用している
- 通常の法人税制度を適用している
会社がフリーゾーンにあるという情報だけでは判断できません。
法人税登録と税務申告は引き続き必要
Small Business Reliefは、自動的に適用される免税制度ではありません。
利用する場合も、基本的に次の対応が必要です。
- EmaraTaxで法人税登録を行う
- Tax Registration Numberを取得する
- 売上高や会計記録を整理する
- 税務申告書上でSmall Business Reliefを選択する
- 簡易税務申告を期限内に提出する
選択は税務期間ごとに行う必要があります。
法人税申告の期限は、原則として各税務期間終了後9カ月以内です。例えば、12月31日決算の法人は、通常、翌年9月30日までに申告します。FTAも申告と納税を税務期間終了後9カ月以内に行うよう案内しています。
また、Small Business Reliefを利用しても、売上高や取引を証明する帳簿・請求書・銀行明細などは、原則として該当する税務期間終了後7年間保存する必要があります。
利用前に確認したいデメリット
Small Business Reliefを利用すれば、必ず有利になるとは限りません。
適用した税務期間に発生した税務上の損失や、控除できなかった純支払利息は、将来の税務期間へ繰り越せない場合があります。
そのため、次のような法人は事前の比較が必要です。
- 設立初期に大きな赤字が発生している
- 設備投資や事業開発費が多い
- 翌年以降に大幅な黒字化を予定している
- 借入金の利息負担が大きい
- グループ内再編や事業譲渡を予定している
目先の法人税だけではなく、損失の繰越しや将来の利益計画を含めて判断することが重要です。
売上高が300万AEDを超えた場合
売上高が基準を超え、Small Business Reliefを利用できなくなった場合は、通常の法人税制度に基づいて課税所得を計算します。
一般的な法人税率は、課税所得375,000AEDまでが0%、375,000AEDを超える部分が9%です。したがって、「300万AEDを超えたら利益全額に9%が課税される」という説明は正確ではありません。
売上高と課税所得は異なるため、両者を分けて管理する必要があります。
まとめ
Ministerial Decision No. 131 of 2026により、Small Business Reliefの適用期限は、2026年から2029年まで延長されました。
一方で、次の条件や手続きは引き続き必要です。
- 売上高が300万AED以下である
- 過去の関連する税務期間でも基準を超えていない
- UAEのResident Personである
- 法人税登録を行っている
- 税務申告で毎期適用を選択する
- 帳簿や売上記録を保存する
- QFZPなどの対象外区分に該当しない
JCMEでは、事業内容、設立地域、法人区分、年間売上高、将来の事業計画を確認したうえで、法人設立後の税務・会計体制についてご案内しています。
Small Business Reliefを利用できるか分からない方や、フリーゾーン法人とメインランド法人の税務上の違いを確認したい方は、JCMEまでご相談ください。
よくある質問
売上高300万AED以下なら自動的に法人税が0%になりますか?
いいえ。法人税登録と税務申告を行い、申告書上でSmall Business Reliefを選択する必要があります。
利益ではなく売上高で判定されますか?
はい。基準となるのは課税所得や純利益ではなくRevenueです。
フリーゾーン法人も利用できますか?
QFZPは対象外です。一方、QFZPではないフリーゾーン法人は、その他の条件を満たせば利用できる可能性があります。
一度300万AEDを超えた後、売上が減れば再利用できますか?
原則としてできません。いずれかの関連する税務期間で基準を超えると、その後の税務期間でも利用できなくなります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務・法務・投資助言ではありません。制度の適用可否は、UAEの登録税務代理人などの専門家へご確認ください。
参考資料:UAE財務省による2023年の制度説明、FTA Small Business Relief Guide、DPTC参考記事

